私の祖母は、大正15年・昭和元年に南九州の城下町でとある武家の末裔として生まれた。先祖は、代々島津家に仕えていたという。祖母は幼い頃、両親を亡くし、祖母の祖母(私にとっての高祖母、つまりひいひいおばあさん)に育てられた。

祖母の祖母(おそらく19世紀、江戸末期生まれの生粋の武家の女)が祖母に託した、示した生き方はただひとつ。「お婿さんを貰って、男の子を産みなさい。先祖代々の墓守を任せる人間が必要。あなたは〇〇家を存続させなければならない。」

祖母は第二次大戦の直前に私の祖父(残念ながら武家の人間ではないが元成金のボンボン)と見合い結婚し、戦後無事に帰ってきた夫(婿養子)との間に子供を5人産んだ。そのひとりが、私の母である。

(祖母の祖母は、結婚を見届けた後に亡くなったという。きっと思い残すことはなかったであろう)

つまるところ私の祖母は幕末武家女に育てられた100%武家の女、母は50%(ハーフ)である。武士の血がめちゃくちゃ濃い。

私の母は私を虐待したりカルト宗教にハマったり発狂したり波瀾万丈な人生を送ってきたが、最近また狂いかけた母と電話していて思った。彼女は現代社会を生きることがとても苦手だ。もうなんかめちゃくちゃ向いていないのである。頭がよすぎてクソ真面目で、しかし現代を生きるには要領が悪い。いろいろ考えたけど、やはり先祖が武士っていうか遺伝的には半分も武士なことが、母の生きづらさを説明できる。生まれてからずっと、母には居場所がない。

たぶん、主君がいて、命を受け、戦に出たり人を殺したり殺されたり切腹する方が向いていた。あるいは武家の女として子供を産んで家を残す役割だけに専念していればよかった。つまり母には御一新なんか来なければよかった。ずっと江戸でよかった。母は武家の女の、あるいは武士の、旧時代の日本の亡霊なのである。

文明開化も近代化もいらなかった。主も刀も持たない母は悲しい化け物のようだ。

祖母は介護されることになったとき「こんな体になるなんて情けない。こういうとき、武家の女なら、守り刀で自分に始末をつけないといけないのに、刀は幼い頃、長持ちごとすべて売り払ってしまった。だから自分で死ぬこともできない、惨めだ」と嘆いていた。祖母はさんざん死にたがっていたが、祖母に依存しまくっていて母親離れができない伯母のせいで限界まで延命治療を受けさせられ、苦しみながら、令和を迎える前に亡くなった。それでも祖母は、祖母の祖母の言いつけを見事にこなし、たくさんの孫やひ孫にも恵まれた。祖母が残した家は、息子に託した家名は、一応続いている。祖母はたぶん最期まで、誇り高い武家の女だった。

(しかしこの祖母も曲者で、母が発狂したとき私に「私は子育てを失敗した。長男も自殺させてしまったし今度は娘が狂うとは……。ごめんね、ほぎちゃん、〇〇(母)をお願いね。ほぎちゃんなら大丈夫!」と言ってきた。お願いねじゃねーんだよおまえの手にも負えない狂った娘をまだ子供の私に押し付けて去っていくなババア!とめっちゃ思った)

私の母は、たぶん早く死んだ方が幸せなのだと思う。できることなら、世が世なら介錯してやりたいが、残念ながら私には25%しか武士の血が流れておらず、武士以外の血が混じったせいで誇りもないかなり俗っぽい人間になってしまったし、あともう母にはできるだけ関わりたくないので、到底無理だ。

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夫と生活していて、突然ブチ切れられることがそういえばないな、と最近気づいた。

実家のひとたち(妹除く)はいきなりブチ切れてくることが多く、会話が成り立たないことが多かった。たとえば(例えにくいが)、「きのう猫が死ぬ夢を見てつらかった」みたいな何気ない日常会話でさえ、「何でそんな話をするんだ! 私もまえに猫が死ぬ夢を見たけどこれを話したら不快になるだろうと思って気を遣って言わなかったのにおまえは!!」みたいなキレ方をされることが頻繁にあり、いま振り返ればそんなん知らねーよって感じである。

ものすごい数の地雷がそこらじゅうにあって(しかしその地雷はこちらからしたら知り得ないこと)、会話の中でうっかり触れてしまうともう大変だった。「新しい洗剤買ったんやね」とかでもアウトだった。めちゃくちゃ理不尽にキレられ、泣かれた。

あとみんな物に当たるのでドアをバンバンしたりガラスを割ったり色々破壊していて非常に迷惑だった。特に父は家をよく破壊していた。片付けるのはこちらである。

無言不機嫌オーラを使うわりには、こっちが頭にきて言い返したり怒ると貝のように押し黙るし、父は殴ってきた(言葉で勝てないと手が出るやつダサい)。

実家の人間、はやくみんなしんだらいいな♪と思ってる。

しかし今の生活の快適さに、結婚して3年すぎてから気付くとは……不幸と比べて幸せは気付きにくいし言語化しにくいし語りにくいとはこういうことか。

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